転職(就職)活動をしていて、複数の企業から内定(オファー)をもらって悩まれた経験はないでしょうか?
厳しい選考過程を経て複数の企業から内定を頂けることは大変ありがたいことです。
しかし、残念ながら入社できる企業は1社のみです。
わたしは10回転職していますが、前回の転職時にも同時に3社から内定をいただき、入社する企業を選ぶのは非常に大変でした。
しかしながら転職の目的やオファー内容の比較・分析を繰り返し、自分の納得できる結論に至りました。
そこで、この記事では:
- 後悔しない決断をするために検討すべきポイント
- 内定の保留・受諾・辞退で失敗しないためのコツ
について解説します。
実際にわたしが使用しているチェックシートも公開します。
「自分の転職の軸と目的」と合っているか、という解説は他のメディアや記事でもよく解説されていますので、この記事ではそれ以外の項目をピックアップしました。
後悔しない決断をするために検討すべきポイント
- 報酬
- 業務内容・範囲
- 裁量
- 社風・カルチャー
- 商材
- 勤務地・勤務時間
- その他自分のこだわるポイント
検討ポイント① 報酬
転職の目的が何であれ、報酬は転職を検討するときに重要な要素です。
企業によって、報酬の制度は異なりますので、入社してから「自分の理解と違っていた・・・」とならない様に入念に確認しましょう。
年収は他の要素を優先するために減額を受け入れるケースもあると思います。
その場合は同じようなポジションの昇給率や年収のカーブなどを確認しておくと長期的な検討がしやすくなります。
提示されている年収に含まれている項目や金額のチェックは必須です。
特に、
- 各種手当(家族手当、住宅手当等)
- みなし残業代(何時間分が含まれているか)
- 福利厚生
- 賞与
- 退職金
などの規定は企業によってかなりバラつきがありますので注意が必要です。
転職して増える分には問題ないですが、現職で支給されているもので減るものがあればその影響も考慮しましょう。
大手日系企業で当たり前の様な制度でも、外資系企業やベンチャー・スタートアップではない制度も結構あります。
また、住宅手当関連でいいますと特に会社名義で住宅を借りている人は注意が必要です。
細かいですが、給与の支払いが当月支払いか翌月支払いなのかも見落としがちなポイントになります。
当月支払いの企業から翌月支払いの企業に転職した場合、約2か月収入がない状態が続きますので、その期間の生活費をあらかじめ確保しておく必要があります。
検討ポイント② 業務内容・範囲
採用通知書にも記載はありますが、採用通知書に記載されている業務内容について、自分の理解と合致しているか最終確認しましょう。
管理職であればマネジメントするメンバーの人数・範囲も確認しておくと良いでしょう。
また、現在のタスクだけでなく、今後予定されているタスクやプロジェクトもあわせて確認すると良いと思います。
大手・ベンチャー間で転職する場合は、役職・肩書が同じでもカバーする業務範囲が異なることがあります。
採用担当部門と最終確認することをおススメします。
大手企業の管理職がベンチャー企業や外資系企業に転職する場合ですと、今まで部下やアシスタントがやってくれていた業務も自分で行うことが求められるケースもあります。
検討ポイント③ 裁量
わたしの経験上、仕事の満足度と裁量には密接な関連があると実感しています。
自分の提案や行動を認めてもらうためにも所属する組織における裁量は重要なポイントです。
より裁量のある環境ですと、自身の成長スピードも加速します。
業務上の裁量がどの程度あるのか現職のレベルと比較することをおススメします。
また、日系グループ企業の子会社や外資系企業に転職する場合、親会社と子会社間の裁量の度合いを確認することも重要です。
あまりにも親会社とのヒエラルキーが強く、子会社や日本支社の裁量がない場合は自身のモチベーションにも影響します。
検討ポイント④ 社風・カルチャー
採用企業が求めるスキルをもっていても、転職先の社風・カルチャーが自分に合っていないとコミュニケーションに苦労したり、十分なパフォーマンスを発揮することが困難になります。
中途入社の社員が活躍しているかチェックしたり、自分の性格やこれまで在籍した企業の文化と比較しながらその企業の社風も確認しましょう。
採用企業も採用した人材がすぐに退職してしまう事態は避けたいので、内定者からの質問には確認・対応してもらえることが多いです。
あわせて、上司となる人のマネジメントスタイルを事前に聞いておくと、入社後のギャップに冷静に対応できます。
転職口コミサイトも参考にする口コミに気を付ければ有効なツールになります。
また、採用企業の社員とのカジュアル面談をリクエストしてみるのも良いでしょう。
検討ポイント⑤ 商材
ポジションや職種によっては扱う商材(サービス)によって特有の経験やスキルを求められることもあります。
また、業界のネットワークを活用することが成果をあげるうえで重要になるケースもあります。
特にこれまで取扱い経験のない商材を扱う企業への転職を検討している場合には、これまでの経験を活かして即戦力として活躍できるのか検討することが重要です。
中途入社の場合、特に管理職の場合は入社後早期に成果を上げることを期待されています。
求人票では「業界未経験可」であっても、ビジネスの現場がそれを許してくれるかどうかは別の場合もあります。
その商材の経験豊富なプロパーのベテラン社員と肩を並べて仕事ができるのかも重要なポイントになります。
また、その転職先で長期的なキャリアを考えている場合には、その商材の将来のポテンシャルも検討しましょう。
検討ポイント⑥ 勤務地・勤務時間
勤務地・勤務時間も実生活において人によってはインパクトの大きい要素です。
リモートワークの実施状況も含めてその勤務地・勤務時間が自分にとってどういう影響があるのか確認することをおススメします。
わたしの場合、今回の転職では地元へのUターンも選択肢に入れていましたので、勤務地が地元であることは大きなメリットでした。
また、勤務時間に関しては外資系企業の場合、本社のある国によっては日本の通常の勤務時間外に会議などが入ることもあり得ます。
アメリカ西海岸の企業であれば日本の早朝、ヨーロッパ、アメリカ東海岸の企業であれば日本の夕方から夜中になります。
自分の生活リズムや育児や介護にどういった影響があるのか確認しておきましょう。
検討ポイント⑦ その他自分のこだわるポイント
以上、わたしがチェックリストに入れている項目を挙げてみましたが、転職に求めるポイントは人それぞれだと思います。
改めて自分の転職の軸を見直して、現職で強くメリットと感じている項目や今回の転職で重視している他の項目があれば検討材料に追加しましょう。
ただし、人や制度などは割と流動性の高い項目になりますので、わたしは検討材料としてはあまり重視していません。
例えば、上司となる面接官の人柄に惹かれることもあるでしょう。
それ自体はポジティブなことなのですが、その方が翌月には転職してしまうリスクもあります。
また個人的な経験でいいますと、給与以外の各種制度も割と有名無実化していたり、頻繁に改定が繰り返されることを経験しましたので、参考程度に捉えています。
内定の保留・受諾・辞退で失敗しないためのコツ
複数の内定を比較するポイントが整理できたところで、こちらでは失敗しないコツをわたしの経験から紹介したいと思います。
- 回答期限の設定
- オファー面談を設定する
- 比較に現職を含める
- 数値化して比較する
- 違和感と向き合う
- 改めて企業研究
失敗しないためのコツ① 回答期限の設定
複数の選考が進行している場合、同じタイミングで内定を得られないケースもあり、特に志望度の高い企業の選考が遅れている場合は調整が必要となります。
転職サイト等では内定から2、3日で返事をしなければならないと記載されていることもありますが、わたし個人の経験で言えば少なくとも1週間は待ってくれるケースがほとんどでした。
また、複数の企業で迷っていることを伝えて問題になったことはありませんでした。
転職エージェント経由で応募していると、こういったスケジュールの調整も代わりに行っていただけます。
重要なのは、内定の連絡をもらったら、すぐに内定のお礼を伝えてお互い調整可能な範囲で明確な回答期限を握ることです。
わたしの場合、今回内定をくださったうちの1社が何度も条件交渉を仕掛けてくる企業だったので、他の内定先との期限の設定に苦労しました。
最終的にはこちらからベストオファーの期限を申し出るようにしました。
失敗しないコツ② オファー面談を依頼する
面接ではどうしても採用企業側から得られる情報が限定されるため、内定をもらっても入社するかどうかの判断材料が十分ではないケースも多いです。
こちらから依頼しなくても採用企業側から申し出がある場合もありますが、ぜひオファー面談は実施してもらいましょう。
理由は2つあります。
ひとつは、よりカジュアルな場で面接の場で聞けなかった情報を入手することができることです。
もうひとつは、時間稼ぎができることです。
特に他の選考がまだ残っている場合は、オファー面談の日程を調整することによって多少時間が稼げる場合もあります。
また、オファー面談というステップを追加することで、内定を受諾するかどうか検討する時間も多少稼ぐことができます。
もし選考過程で内定までに職場に行く機会がなかったら、内定を受諾する前に一度オファー面談の際に職場見学を依頼することをおススメします。
わたしの場合はなるべく遅い時間に設定してもらって、終業時間あたりの社員の様子をチェックする様にしています。
失敗しないコツ③ 比較に現職を含める
複数の内定をもらった場合、応募先の企業のみで比較をしてしまいがちですが、比較を行う際には現職の企業も含めましょう。
つい転職先の情報・条件に集中してしまいますが、転職によって現職で得られていたメリットを失うこともあります。
そもそも現職を離れて良いのか?という検討もここでおこなうべきでしょう。
転職後のギャップを小さくするためにも、転職によるメリット・デメリットは現職のものも含めて評価することが重要です。
失敗しないコツ④ 数値化して比較する
複数の内定を比較する際には企業イメージや面接時の印象などからどうしても感情的なバイアスがかかってしまうことがあります。
迷った挙句に最後は直感で決断することもありますが、その前にいちど数値化して冷静に比較してみることをおススメします。
前述のとおり、数値化して比較する場合は、現職も含めましょう。
一例ですが、こちらはわたしが今回の転職で実際に使用した比較表です。
もともとは各項目を〇、△、×、という3項目で比較していたのですが、それだと項目毎の価値が同じになってしまいます。
したがって、わたしは自分が重視する項目や生活に与えるインパクトが大きい項目にはより多くのポイントを入れられる様にしています。
上の表では、重要な項目は5点満点、妥協できる項目は3点満点で設定しています。
ここでわたしがこういった比較をおこなう際に参考にさせて頂いた書籍を紹介します。[PR]
サイエンスライターの鈴木裕さんによる著書です。科学的なアプローチで適職を探す、という革新的な内容です。
幸福度や満足度を指標化して自身のキャリアを科学的に評価するというアプローチが紹介されています。
また、本書では感情的なバイアス(自分の脳のバグ)を取り除くための分析方法も解説されています。
オファーの比較だけではなく、これから転職活動の開始される方にも参考になる書籍だと思います。
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
失敗しないコツ⑤ 違和感と向き合う
内定に至ると、どうしてもこれまでの面接にかけたエネルギーや時間、現職からの解放感から選考過程に感じた違和感をスルーする傾向になります。
しかしながら、わたしの経験から、その違和感は転職後に前職とのギャップとして現れることが多かったです。
もし、面接やオファー面談で何かその企業ではたらくことに対してなんらかの違和感を感じたら、きちんと向き合ってみましょう(書き出してみるのがおススメです)。
そして、それが自分にとって受け入れられることかどうか検討してみることが重要です。
わたし自身の失敗談をひとつ紹介します。
Uターンを優先するあまり、「未経験の業界に転身すること」と「自分の成果が業界経験に依存していたこと」を軽視して、転職後に業界の違いのギャップに苦しんだことがあります。
今おもえばその違和感は内定をもらったときに確かにあったはずなのですが、自分で蓋をしてしまっていたのだと思います。
失敗しないコツ⑥ 改めて企業研究
応募前や選考中にも応募企業の研究は行っていると思いますが、ここで改めて企業研究をおこなうことをおススメします。
オファー面談まで進んでいると応募前より応募企業に対する情報量が増えています。
また、ここまでくれば入社するかどうかの判断になりますので、自分の人脈でその企業や同じ業界の企業に勤務している人がいれば相談してみることも有益です。
実際に、わたしはよく知人や知人の知人から自分の勤務先や同じ業界内の企業に関する問い合わせを受けることが結構あります。
わたしも自分の人脈を使って応募企業・業界をリサーチします。
周りにそういった人がいない場合は、その案件を紹介してくれた転職エージェントに相談してみるのも選択肢です。
もし過去にそのエージェント経由で入社した人がいる場合、面談をもちかけてくれるケースもあります。
まとめ
以上、この記事では:
- 後悔しない決断をするために検討すべきポイント
- 内定の保留・受諾・辞退で失敗しないためのコツ
について解説しました。
厳しい転職市場で複数の内定を得られることは大変喜ばしいことです。
しかしながら選択肢が複数あることでそれぞれの条件を評価することはとても悩ましいものです。
こちらの記事が少しでもご自身の納得できる結論に至るための参考になれば幸いです。
わたしは今回の転職活動で3社から内定を頂きましたが、すべて転職エージェント経由での応募だったため、スケジュール調整や雇用条件に関する交渉などがとてもスムーズでした。
応募者自身が企業側と直接交渉するのはストレスもかかりますので、わたしの経験から転職エージェントの活用をおススメします。
また、それぞれの企業にメリット・デメリットはありますので、いずれの選択をしても何かしらのギャップには向き合うものだという割り切りもある程度必要だと思います。
最後まで読んで下さりありがとうございました!